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2006年 05月 05日
神戸大学・大前先生の問題、いろいろなご意見が出てきていますが、連休に入ったためか公式には続報がでていません。しかしながら、問題の特許(特開2005-324319)を読んでみたり、NEDOの助成金「大学発事業創出実用化研究開発事業」の公募要領を見る限りにおいては、どこが問題でこのような新聞沙汰になっているのか、良くわかりません。特許のベースとなった根本的な研究成果そのものが「捏造」であるなら理解できますが、見る限りにおいてはあくまでもこの特許の記載内容が「実験されていない」ということであるように書かれています。
この問題を詳しく取り上げておられる「海の研究者」さんのブログでは、 "特許中に未実験のデータがあっても、それが推測値であることを明記しておけば問題ないが、そうでなければ明らかな捏造であり研究者のモラルが問われる"とおっしゃっておられます。特許庁が何も言わなければ、隠し通す、ところが問題であるようにおっしゃっています。 ここで、まず、「特許と論文はどこが違うのか?」ということを考える必要があるかと思います。論文は研究者としての業績以外に「直接的」な金銭的メリットはありません。これに対し、特許は活用すれば金銭的メリットが生じる「財産」です。つまり、研究を進めていく過程で発生した発明の思想を「財産」として保護してもらうための文書です。現時点で実験している/していない、というようなことは、全くといっていいほど関係がないと考えられます。しかしながら全くの「嘘」は通りませんし、実際に実験したら異なった結果が出た、ということもあり得ます。仮にそうであったとしても、特許係争にでもならない限り、問題になりません。 特許に嘘が書いてあって、それがそのまま成立し、どこかの事業者が実施して特許係争になった場合に、その明細書の真偽が争点になる場合があります。そこまで行ってはじめて問題になり、嘘がばれて「発明が無効」となるか、「特許に抵触しない」という結果になり、多額の費用を費やし、成立すれば維持費用も支払わねばならない特許が「何の役にも立たない」という結果となります。この場合、困るのは出願人です。であるが故、自己責任において「推定」を記載するのは問題ないと思いますし、ルールに反しない程度にうまく文書として纏めることは自分の発明思想を保護するための文書を作るという観点では必要な行為です。推定を書こうが嘘を書こうが、chem@uさんもおっしゃっている通り、「権利成立後もしくは他の特許との関係で権利関係の揉め事にでもならない限り、明るみに出ることは無い」のです。 私が今、大学の先生方が理解されていないと考えている「特許と論文の違い」は、特許は出願し、成立させたとしても、活用してお金を稼がないと全く意味がないが、論文は投稿し、掲載された時点で業績として意味がある、という点だろうと思います。要するに、特許がお金を稼げなかったとすれば、単なる不良資産です。したがって、特許庁も一つ一つの出願の実験について、詳細に審査をしているわけではなく、あくまでも「発明思想」が権利として認めうる要件を備えているか、という点が最も重要な審査項目となっていると思われます。それ以上の詳細は、実際に特許係争にでもならない限り省みられないのではないかと思います。 次に、NEDOの助成ですが、この「大学発事業創出実用化研究開発事業」という制度、大学のシーズを中小企業が実用化しようという場合に、大学の先生に対して中小企業からの助成金に加えNEDOからも助成する、という制度です。これにより技術移転を促進しよう、というために設けられた研究資金です。科研費などと異なって、「中小企業が実用化する」という点がポイントであり、単に大学の成果だけを見ているのではないと思います。中小企業自らが大学のシーズを使って事業化に結びつけるという計画があって初めて応募できるものですから、少なくとも大前先生のシーズはその企業に役に立つと認められたのだと考えます。世の中に出る製品は、単独の特許のみで権利が保護できるわけではありませんから、出願した特許が評価された、というよりは研究者および技術のポテンシャルが評価されたと見るべきで、個々の特許が「推定」を含むか否かなど、まともな企業人なら明細書から見抜けるはずです。したがって、問題の明細書は「発明思想」が必要十分に記載され、コンペティタからカウンター特許を出されるような隙はないか?というような判断ではなかったかと思います。捏造特許で4500万円の研究資金を得た、というのはあまりにも短絡した言われようです。 私の独善的な考え方がかなり入っているとは思いますが、このようなことで問題視されてしまった大前先生に同情を禁じえません。
by f16fightingfalcon
| 2006-05-05 00:13
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