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2006年 05月 06日
公式見解や調査結果が出ないままですが、当事者ではない大学などの研究者の方々のご意見を伺いましたので、私も少し意見を述べておきたいと思い書き始めましたが、妙に長くなってしまいました。
1. 専門分野と特許の内容 chem@uさんは、種々の調査の結果から今回の特許の内容自体を疑っていらっしゃるようです。長いですが、引用させていただきます。 大前 伸夫「トライボロジー」という分野は従来、機械工学の重要な要素技術の一つとして展開されてきた分野で、昔は潤滑剤やベアリングなどの材料や部材の研究が中心だったかもしれませんが、「摩擦・摩耗・潤滑のメカニズムなどを扱う学問領域」は摩擦や摩耗と言った現象を部材が接触する界面の微視的な観察に基づく分子論的な研究へと展開していっており、大前教授ご自身の研究領域も引用文中に出てくる「マイクロトライボロジー」という分野へと発展しています。このマイクロトライボロジー分野の基礎的研究は、摩耗現象だけでなく切削加工(本質的には同じ)における基礎的知見となり、大前教授が別途すすめられていたとされる表面処理技術と組み合わせられ、「鉄が加工できるダイヤモンド工具」の発明に至ったとしても、私にとっては全く違和感はありません。また、「被削材溶着なし、磨耗認められず」という結果を出す設備がなかった事を懸念されていますが、トライボロジーの研究室であれば一般的には摺動試験装置などはあるはずですから、切削加工工具の模擬的な試験は可能だろうと思われます。 2.特許と実用化 話の流れから、「特許を実用化する」というような考え方となっているように見えますが、アイデア段階の特許として出されたものを実用化する、という訳ではないと思います。あくまでも実用化されるのは「技術」であって、当初書かれたアイデア特許の範囲にとどまるか否か、問題ではありません。結果的に実用化された対象物について新たに権利を保護するための手段を考えることになると思います。海の研究者さんは以下のように書かれており、捏造された内容がそのまま公開され、利用して不利益を被る事業者が出るのではないかと心配されています。 では特許申請はどうでしょうか?神戸大学教授の場合、この特許は申請だけでまだ利用も公開もされていないのですから、大学の名誉も傷つけてないし、損害も与えてないですよ。申請だけだとセーフ?いやいや、本件が特許として承認され→月日がたち→いずれ一般に公開されて→それを使った一般企業が不利益をこうむる可能性があるではないですか。"えーそんなーこじつけだー"と私も思います。同教授も「後で検証することもあり得ると考えていた」(毎日新聞→先日の記事)そうですが、このまま特許を得ていても未実験項目を追加実験するという証拠はどこにもないのです。就業規定にはたいてい「(懲戒処分対象の)各項目に準じる不都合な行為」も懲戒処分になるとあります。将来的に大学の名誉を傷つける可能性が具体的にあるとすれば、未実験データを実験例として特許申請する行為は「準じる不都合な行為」といえなくもない。従って、神戸大学は本件を調査せざるおえないのです。実際に現実の製品を作り出して利益を得ている企業は必要な技術を用いて製品を開発します。その過程、設計から製造に至る各段階で特許については詳細に調査の上、公開された他社の特許に抵触するか否か、その特許への対応は如何するべきか、自社特許の権利範囲と照合して問題ないか、と言うような検討がなされています。仮に今回問題となっている未実施の内容を含む特許が他社特許として成立したとしても、単に出願人である「国立大学法人神戸大学」が活用できない、と言うだけで、大学の外には何ら不利益は生じません。成立した特許を持っていたら黙ってロイヤルティを払ってくれるほど世の中甘くありません。共同研究などを経ずに特許の内容が実用化されたとした場合も、権利を持っている人が、他社が抵触した、と言うことを証明し、交渉して初めて収入が得られますが、この場合、特許の内容に不備があれば、きわめて不利です。従って、早い段階で共同研究となる訳ですが、アイデア段階で出願した特許をベースとして、企業と共同研究を進めるのであれば、すでに出願した特許の検証もさることながら、共同研究の進展にあわせて大学が果たすべき役割を果たされれば良いのではないかと考えます。 3.法人化の話 前項で述べた通り、仮に捏造であったとすれば不利益を被るのはあくまでも「国立大学法人神戸大学」であるので、虚偽の内容で特許を出願することにより、結果的に出願費用その他が無駄になるわけですからあくまでも学内の処分の対象になる、と言うことで仕方ないところですが、アイデア段階の特許の取り扱いなど、きちんとルールが定められていて初めて処分が可能になると思います。同じく、海の研究者さんのエントリから引用します。 さらに大事な事が一つ。大学教職員は全員、この就業規定および懲戒処分の対象を十分に認識しているはずです。なぜならこの規定は大学が独法化する際に大学内外でうなるほど議論されたはずだからです。(ただ教職員が大学の名誉や信用がなにかを理解していなければダメですけど…)ですからどんな事情であれ神戸大教授の認識は「甘かった」といわざるを得ないのです(新聞各紙への同教授のコメントをあらためてみても、改めて"甘いなあ…"という感想を抱いています)。そもそも、法人化の前は「文部教官教授」という官職の「国家公務員」であったはずで、元から国家公務員法による懲戒規定があったのだと理解しています。国家公務員法82条第3項で「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合」は懲戒対象になることが規定されています。私は企業人なので大学運営など、詳細には知りかねる立場ではありますが、今回の処分の理由が「大学の名誉を傷つけた」というのは、運営費交付金が税金から支出されている国立大学法人が行う処分の視点としては少しずれていると考えます。ちゃんとした技術開発が進められているのであれば、やはり処分は不要であり、むしろ大学としての特許の取り組みを明確にする契機にしていただきたいと思う次第です。もともと、大学の法人化は大学が文科省の部局でなく「法人格」を持つことにより、これまで個人レベルで行われてきた知的財産の活用や企業との共同研究を大学という組織として促進し、大学に属する個々の研究者が持つ高いレベルの技術およびそれらのシナジーを産業に活用する事を奨励しよう、というのが本質です。法人化した結果、国立大学法人神戸大学は、発明者たる大前教授から職務発明として「特許を受ける権利」を譲り受けた上で、出願人となった訳です。ですから、出願および権利化、活用に至るまで責任は法人たる神戸大学が第一義的に持つべきであると考えます。一方的に発明者を処分する、というよりも、法人として、知的財産の戦略を立て、それぞれの研究者が生み出す技術をどのようなベクトルに従って運営するのか、というフレームワークが必要とされているのだと思います。特許も業績としてカウントされるので、とりあえず出願、と言うことではなく、学内の技術、職務発明を如何に財産として運用していくのか、難しい舵取りを要求されることになっているはずで、その点においては個人ベースの業績として積み上げる論文とは峻別して考えるべきでしょう。
by f16fightingfalcon
| 2006-05-06 23:20
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